
水槽の中を、ひれを長く伸ばした魚がふわりと横切っていく。テトラの群泳とはまた違う、ゆったりとした存在感。あれは何という魚ですか、とショップでよく聞かれるのがグラミーの仲間です。
実はグラミーは、初心者にこそ勧めたい熱帯魚のひとつ。丈夫で、酸欠にもある程度強く、しかも品種のバリエーションが驚くほど豊富です。今回は「魚好きおじさん」として、グラミーの飼い方の基本から人気品種まで、実際に飼ってきた経験を交えてまとめてみました。
グラミーってどんな魚?ラビリンス器官という裏ワザ
グラミーはアナバス(キノボリウオ)の仲間で、ベタと近い親戚にあたります。最大の特徴は「ラビリンス器官(上鰓器官)」という空気呼吸のための器官を持っていること。えらだけでなく、水面から直接空気を吸って酸素を取り込めるのです。
原産地は東南アジアの水田や沼地。酸素の少ない、よどんだ浅い水でも生きられるように進化した結果がこの器官です。だから飼育下でも多少の酸欠に強く、停電でエアポンプが止まったくらいでは慌てて全滅する、ということが起きにくい。ここが初心者に優しいポイントです。
ただし勘違いしてほしくないのは、「エアレーションが要らない魚」ではないということ。水面に出られない構造のフタをしてしまったり、水面を油膜がびっしり覆っていたりすると、逆に呼吸ができずに調子を崩します。水面を空けておくこと、これがグラミー飼育の第一の約束です。
基本の飼育セッティング
水槽サイズは種類で決める
グラミーと一口に言ってもサイズはさまざまです。ゴールデンハニー・ドワーフグラミーのような小型種なら30〜45cm水槽でも十分。一方、パール・グラミーやマーブル・グラミーは成長すると10cm前後になるので、60cm水槽を用意してあげたいところです。60cm水槽の立ち上げに必要な機材一式は別記事にまとめているので、これから揃える方はそちらも参考にしてください。
水温・水質はおおらかでOK
適水温は24〜28℃。26℃前後に設定しておけば年間を通して安定します。水質は弱酸性〜中性(pH6.0〜7.0)が理想ですが、この仲間は水質への適応力が高く、日本の水道水でもそのまま問題なく飼えることがほとんどです。神経質に調整するより、pHと硬度の基本を押さえたうえで、こまめな水換えで安定させるほうが結果はいい。
流れは弱めに
これは意外と見落とされがちですが、グラミーは強い水流が苦手です。長いひれが流されて疲れてしまい、隅でじっとするようになります。外部フィルターを使うならシャワーパイプを壁に向けるなどして、水面がゆらゆら揺れる程度に抑えてあげましょう。水草を多めに植えて流れを弱めるのも有効です。
人気のグラミー品種図鑑
グラミーの楽しさは、何といっても色柄の豊富さ。改良品種も含めて、ショップでよく見かける顔ぶれを挙げておきます。
- ゴールデンハニー・ドワーフグラミー……山吹色の小型種。温和で最も飼いやすく、入門種の決定版
- パール・グラミー……体側に真珠を散りばめたような斑点。落ち着いた水草水槽によく映える
- コバルトブルー・ドワーフグラミー……深い金属光沢の青。単独でも十分に主役を張れる
- ネオン・ドワーフグラミー……青地に赤のストライプ。オスの発色が特に鮮やか
- サンセット・ドワーフグラミー……夕焼けのようなオレンジ。ドワーフ系の改良品種
- マーブル・グラミー……大理石模様の中型種。丈夫でコケも食べてくれる
- レッド・グラミー(ハニーグラミーの改良系)……燃えるような赤。数匹でまとめると見事
- ピグミー・グラミー……3cmほどの極小型種。鳴き声のような音を出すことで知られる
- ゴールデン・グラミー……黄金色の中型種。マーブルと同種の色違い
それぞれ実際に購入できるものを並べておきます。生体は季節や入荷状況で在庫が変わるので、気になる品種はリンク先で最新の状態を確認してみてください。
混泳と餌やりのポイント
グラミーは基本的に温和ですが、オス同士は縄張り争いをします。特にドワーフ系のオスは、狭い水槽に複数入れるとしつこく追い回すことがある。小型水槽ならオス1匹+メス複数、あるいはオス1匹だけにするのが無難です。
他魚との相性は良好で、テトラ類、コリドラス、プラティあたりとはうまくいきます。逆に避けたいのは、ひれをかじる習性のあるスマトラ(バーブ系)と、動きの速すぎる魚。長いひれが格好の標的になってしまいます。詳しくは混泳の相性ガイドも合わせてどうぞ。
餌は人工飼料をよく食べます。ただし食べ方がゆっくりなので、素早い魚と一緒だと横取りされがち。フレークを水面に少しずつ、グラミーが食べ終わるのを見届けてから追加する、という与え方がおすすめです。冷凍赤虫を週に1〜2回混ぜると、発色がぐっと良くなります。
実践のポイント
- 水面は必ず空気に触れる状態を保つ。フタは密閉せず、油膜は水面のゆらぎか油膜取りで解消する
- 水流は弱めに。シャワーパイプの向きを壁側にする、水草で流れを分散させる
- ドワーフ系のオスは1水槽に1匹が原則。オス同士の小競り合いを避ける
- 水換え時の温度差に注意。空気呼吸する魚は水面付近にいる時間が長く、冬場は水面の冷えが直接響く
- 導入直後は隠れ家を用意する。流木や背の高い水草があると落ち着くのが早い
- 餌はゆっくり少量ずつ。食べ残しはすぐ回収して水質悪化を防ぐ
まとめ
グラミーは「丈夫で、きれいで、しかも個性がある」という、飼育魚として理想的な条件をひととおり備えた仲間です。テトラの群泳に少し物足りなさを感じてきた頃、水槽に一匹迎えてみると、景色がぐっと変わります。
まずはゴールデンハニー・ドワーフグラミーあたりから。数週間もすれば、餌の時間に水面まで寄ってくるようになり、こちらの顔を覚えたんじゃないかと思う瞬間があります。あののんびりした泳ぎ方に、きっとやられますよ。
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